放送大学卒業生が語る、社会人が放送大学を活用する5つのメリット
私は2017年の8月に放送大学教養学部(社会と産業コース)を卒業しました。
卒業までにかかった費用は、およそ35万円、要した時間は10年にも及びました。
働きながらの勉強は楽ではありませんでしたが、卒業して冷静に考えてみると、充実した日々を過ごしていたような気がしています。
そこで、今回は、私が学んだことを簡単にご紹介させていただきたいと思います。
放送大学の講義形式は、テキストを読んだり、ラジオやテレビを聞いて勉強する「放送授業」と、実際に先生の講義を聴くことのできる「面接授業(スクーリング)」の2種類があります。
どちらも適当な割合で単位を取得しないと卒業することができません。
放送授業
放送大学の授業といえば、ラジオやテレビを聞いて勉強するイメージがあると思いますが、私はラジオもテレビもほとんど活用しませんでした。
テキストを熟読することだけに徹して、単位認定試験に挑みました。
このため、放送大学のよさを半分しか享受できていないと言われます。
しかし、このテキストが、結構まとまっていているのです。
放送大学で受講できる科目のジャンルは多岐に渡ります。
放送大学の科目は、各分野の最新の研究をされている有名大学の先生が担当しており、テキストもその先生が執筆しています。
分量も適度で、覚えなければならない項目だけでなく、きちんと教養を身につけるための背景や歴史なども、きちんと記されてあります。
「アカデミックなものは実務では役に立たない!」
と言い切るビジネスマンも少なからずいるのではないかと思いますが、放送大学の科目は、結構、実務的なものも含まれています。
よく言われるビジネスマンの3大スキルとして、
①英語
②会計
③IT
がありますが、どれもそれなりに対応している科目があります。
英語だったら、英会話や英文法、会計だったら、簿記入門や会計学、ITだったら、セキュリティや情報リテラシーなど、好きな科目を学ぶことによって、実務スキルを学ぶことができます。
もちろん、バリバリのアカデミックな科目もあります。
私も物理や歴史の科目を履修したことがありますが、とても懐かしかったです。
また、民間の資格試験に対応している科目もあります。
前述した簿記入門や会計学、原価計算などは、簿記検定の準備にもなります。
英語系の科目は英検やTOEICの勉強にもなります。
セキュリティやプログラミングについては、情報処理試験に対応しています。
他にも、社会保険や年金の科目は社会保険労務士、経営戦略系の科目は中小企業診断士、金融や銀行、家計診断の科目はファイナンシャルプランナー…と、有名な資格試験の勉強ともシナジーがあります。
面接授業(スクーニング)
面接授業は、文字どおりのスクーリングで、土曜日曜に、各地域の学習センターへ足を運んで、一日中、講義を聴くという形式の授業になります。
時間は拘束されますが、単位認定試験はなく、とりあえず出席だけしておけば単位だけは取得することができます。
ただ、放送大学の受講生は、単位取得だけが目的の人は結構少なく、純粋にスキルアップがしたい、教養を身に付けたいという人が多いため、講義は結構盛り上がります。(前の席から埋まっていくなんて、信じられるでしょうか?)
例えば、私が受講したファイナンス系の講義の例を挙げます。
この講義では、先生が話を続けるだけでなく、よく質問をするおじさんがいました。
確か、年金の細かい数字の質問だったと記憶していますが、その質問に対して、先生がうまく答えることができなかったのです。
それに対して、突然、
「私は社労士ですが、その回答は・・・」
と、別の学生が回答を始めたのです。
その回答に対して、また別の学生が、
「私は税理士ですが、その解釈は・・・」
と、あらゆる専門家が先生の講義とは別に議論を始めてしまったのです。
最後は先生が話をまとめていましたが、聴いている私も、さまざまな専門家の意見を目の当たりにし、その分野における理解が深まった気がしました。
これは放送大学の講義ならではの特長だと思います。
放送大学のメリット
①学位がとれる
たとえ通信制の大学とはいえ、放送大学は日本の私立大学としてきちんと認められています。
このため、128単位を取得すると、「教養学士」の学位を取得することができます。
会社員であることと並行して、4年生大学の卒業の証を手にいれることができるのです。
私は他大学も卒業しており、3年生から編入することができたため、64単位(32科目)を取得するだけで学位を取得することができました。
1年生から入学する場合は128単位(64科目)の取得が必要ですが、コツコツとがんばっていけば、必ず卒業することができます。
ちなみに、放送大学は1年生入学の場合は10年間、3年生編入の場合は6年間、在籍することが可能です。
しかし、在籍期間を過ぎても、再入学することができ、取得した単位は保存されますので、時間を気にすることなく、自己啓発に励むことができます。(私も再入学卒業者のひとりでした。)
②入学試験がない
放送大学には普通の大学のように入学試験がありません。
原則、全員が入学することができます。
なので、入試難易度は低いですが、卒業難易度はそこそこ高いです。
1年次入学で4年で卒業できる人は10%以内であると言われています。
社会人が多いため、目的が純粋な自己啓発であることが多く、卒業して学位をもらって就職活動に役立てて…
というモチベーションは働かないのでしょう。
③自己啓発ができる
大学は勉強するところです。
放送大学には年配の方々も多く、真剣に自己啓発をしている人が多いです。
モチベーションも高く、講義では質問が飛び交っています。
周囲の方々を見ていると、自分のモチベーション向上にも役立ちます。
学べる科目も多岐に渡ります。
英語を勉強し直したい人、歴史を深掘りしたい人、情報処理のスキルを身に付けたい人…など、学びの目的はさまざまです。
純粋に勉強をして教養を身に付けたい人には絶好の機会だといえるでしょう。
④人脈をつくることができる
放送大学に通学している人のバックグラウンンドは多様性に富んでいます。
公認会計士、社会保険労務士、事業会社の社長、疲れたサラリーマン、フリーター、専業主婦…等々。
クラブ活動などの野外活動も活性化しているので、趣味の合う人たちでひとつのコミュニティを形成することができます。
よく見かけたのは、英会話サークルや囲碁サークル、お城の調査サークルなどです。
時間の都合もあり、私はうまく活用することができませんでしたが、うまく活用すると、最高の人脈を形成することができると思います。
⑤学生割引の特典がある
学生割引の代表的なものは携帯電話料金の割引です。
一時期までは、私も学生として基本料金を割引することができていました。
ところが、携帯電話やスマホ業界は時が経つのが早く、制度がめまぐるしく変化し、いつの間にか、アンダー25(つまり25歳以下の学生)のみが学生割引の対象に変更されていました。
私は3年間だけでしたが、携帯電話の学生割引を有効活用することができました。
また、現在、利用できる学生割引といえば、各種施設における入場料の割引を挙げることができます。
博物館や遊園地、スーパー銭湯などの各種施設で学生証を提示することで、入場料を安くすることができます。
私の趣味のひとつに、スーパー銭湯巡りがあります。
週末には、息子とふたり、もしくはひとりで温泉によく行きます。
元湯、炭酸風呂、ジェット風呂、シルク風呂、電気風呂、壺湯を堪能し、風呂上がりに飲むりんご酢、コーヒー牛乳は格別です。(自動車で行くので、ビールが飲めないのはあしからず。)
くつろぎのスペースで好きな本を読むのも至福の時間となります。
血行がよくなり、頭の回転がよくなるからなのでしょうか。
この時間を学生割引後の料金で楽しむことができると思ったら、学生の身分を維持したくなるのは当然です。
パソコンの購入も学生割引を活用することができます。
私は90年代前半から、macを使っていましたが、Appleのホームページからパソコン本体やタブレットを購入するときには、いつも、教員・学生用のホームページを活用しています。
本来は学術・研究目的のものだと思われますが、合法的に、私も学生に該当しているので、かなりの恩恵を受け続けています。該当する人にはおススメです。
今後の予定
このように、放送大学生活は、私にとって非常にいい人生経験となりました。
今後は、少し時間を置いたのち、放送大学大学院に入学してみたいと考えています。
大学院では、マスター研究つまり修士論文の提出が必要となってきますが、こんなにモチベーションの高い人たちに囲まれていたら、どんな分野の研究でも結構面白いのではないかと思っています。
この件については、進捗があり次第、活動報告させていただきます。