統計検定3級の難易度と資格取得体験記
AI(人工知能)やビッグデータといった技術が、ビジネスの世界に浸透してきています。
これらは新しい技術のように見えますが、膨大なデータを処理・分析するという意味では、古典的な統計学がベースになっています。
統計学は、高校の数学で学習する確率・統計の分野であり、少しマニアックなイメージをもっている人が多いと思います。
しかし、最近は「英語、IT、統計」が、ビジネスマンの3大ベーシックスキルと言われるほど、基礎スキルとして定着しつつあります。
今回は、その統計スキルを測定する数少ない資格として「統計検定3級」を紹介したいと思います。
資格の概要
統計学は、理系の学問というイメージが強いかもしれませんが、文系・理系問わず、ほとんどの科目の基礎となっています。
実験、調査、観察研究によって得られたデータに基づいて統計的に正しく推論を行う力は、すべての学問分野で必要とされています。
企業でも、データに基づいて経営戦略を決めたり、商品企画や生産管理を行うことが当たり前になってきていますので、新入社員に学んできてほしい分野のひとつとして統計学を挙げることが多くなってきています。
統計検定では、データ分析の基礎知識と、実際にそれを身近な問題解決に活かすことのできる統計的問題解決能力を測定することができます。
統計検定3級では、大きく分けて、次の3つの分野を試験の範囲としています。
(1)基本的な用語や概念の定義を問う問題(統計リテラシー)
(2)用語の基礎的な解釈や2つ以上の用語や概念の関連性を問う問題(統計的推論)
(3)具体的な文脈に基づいて統計の活用を問う問題(統計的思考)
具体的には、次のような問題が出題されます。
・標本調査(母集団、標本、全数調査、無作為抽出、標本の大きさ、乱数)
・データの散らばりの指標(四分位数、四分位範囲、標準偏差、分散)
・データの散らばりのグラフ表現(箱ひげ図)
・2変数の相関(相関、散布図、相関係数)
・確立(独立的な試行、条件付き確率)
通常のペーパー試験は、例年、6月と11月の年2回に分けて実施されています。
試験時間は60分で、マーク式(30問)の100点満点で実施されます。
合格最低点は、協会から明らかにされていませんが、60点から70点の間にラインがあるものと推測しています。
資格の難易度(客観的)
では、この資格の難易度を見ていきたいと思います。
一般的に、資格というものは、その人の経験や背景によって、難易度が異なってきます。
法律関連の仕事をしている人は法律系の資格はとっつきやすいですし、IT関連の仕事をしている人はIT系の資格は容易に感じられることでしょう。
しかし、その人にとって、新規分野の資格だと、入門資格でも、かなりの難易度に感じられることでしょう。
そこで、私は、資格取得の難易度を、次の5段階に分けて評価することにしました。
【S】超難関資格
資格を取得するまでに、3〜5年程度の期間を要するもの
弁護士、公認会計士、その他サムライ資格など
【A】難関資格
資格を取得するまでに、1年程度の期間を要するもの
英検1級、簿記1級、XX1級など
【B】中堅資格
資格を取得するまでに、6ヶ月程度の期間を要するもの
英検2級、簿記2級、XX2級など
【C】入門資格
資格を取得するまでに、3ヶ月程度の期間を要するもの
英検3級、簿記3級、XX3級など
【D】簡易資格
資格を取得するまでに、数週間程度の期間を要するもの
XX4級、その他在宅受験資格など
この基準に従うと、統計検定3級の難易度は【C】入門資格に属しているのではないかと感じました。
「統計」という、とっつきにくさもあって、【B】中堅資格に限りなく近いのかもしれません。
データ分析の仕事をしている人にとっては、平易かもしれませんが、データ分析を全く知らない人だと、3ヶ月以上は覚悟しておいたほうがいいかもしれません。
私の体験談(主観的)
私は、数学検定1級持ちで、学生時代も統計を使っていました。
仕事でもデータ分析を活用していますし、母校の通信制大学でも、データ分析に関連した単位をいくつも取得しました。
このように、私は、昔から統計分野が得意だったのですが、統計だけに特化した資格は保有していませんでした。
そこで、統計学を体系的に理解できているのか疑問を感じたため、まずは、基礎固めとなる3級の受験を決意したのです。
試験の準備には、協会が出版している公式のテキストを使いました。(2021年版に更新しました。)
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私は使用していませんが、試験のレベルを確認したい人は、次の問題集も併用するといいかもしれません。(2021年版に更新しました。)
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私は、上記のテキストを2週間ほど読んだ後、2014年6月に受験し、100点満点中96点で合格することができました。
統計検定3級に関しては、合格率は60%から70%の間で推移していますので、上記の2冊を丁寧に読んでいれば、合格することは難しくないと思いました。
私は、運良く、実務でも統計を使っていますので、資格取得に関しては苦労しませんでしたが、この試験の内容は、よくまとまっていると思います。
統計を使った具体的な事例
例えば、このブログでよく扱っているテーマとして、家計の貯蓄額の話を挙げてみましょう。
ざっくりですが、日本人の貯蓄額の平均値は2000万円近くだと言われています。
「みんなそんなに多いの?うそでしょ?」
しかし、統計的に、日本人の貯蓄額が2000万円付近にあることは間違いではないのです。
タネ明かしをすると、これは、すさまじい大金持ちの人が、平均値を引っ張り上げている結果にすぎません。
貯蓄100万円の人が9人いても、貯蓄2億円の人が1人いれば、全体の平均値は2000万円程度に引っ張り上げられるのです。
このため、貯蓄額のような偏りのあるデータについては、平均値よりも中央値(大きい順に並べてちょうど真ん中の値のこと)のほうがしっくりときます。
では、日本人の貯蓄額の中央値はいくらくらいなのでしょうか?
答は、約1000万円ということです。
少しは納得できましたでしょうか?
私はまだしっくりときません。
「さきほどの平均値2000万円よりはマシだけど、それでもみんなすごく貯金しているなぁ。」
私はそう思いました。
では、平均値でも中央値でもない、最頻値でみてはどうでしょう。
最頻値とは、平均値でもなく中央値でもなく、一番、データが集まっている付近の値のことをいいます。
日本人の貯蓄額の最頻値は…
100万円前後です。
ほとんどの世帯が、貯蓄額100万円前後の位置に分布しているのです。
これだと、なんとなく、理解できる気がします。
・平均値:2000万円
・中央値:1000万円
・最頻値:100万円
これらのちがいがピンとくるのは、統計学を駆使しているからに他なりません。
ここでは文章で書いていますが、分布図や箱ひげ図を用いるともっと分かりやすく表現できます。
これも統計学です。
統計学は、日常生活での判断にも活用できる、まさにベーシックスキルなのです。
また、資格だけが欲しいのであれば、従来のペーパー方式ではなく、2016年から実施されているCBT(Computer Based Testing)方式を選択するのもアリだと思います。
CBT方式では、好きな日時に好きな場所で一人で受験することができるため、いつでも資格を取得することができます。
たとえ不合格になったとしても、一週間程度、間隔を空ければ、再度、受験することも可能です。(別途、再受験費用はかかりますが。)
私は、統計検定に関しては、まだCBT方式で受験したことはありませんが、金融業務能力検定では、いくつかCBT方式で受験した経験があります。
CBT方式では、その場で結果が判明しますので、試験後に自己採点とか、もやもやした気分になることもありません。
白黒がはっきりするので、次のアクションを立てやすいメリットもあります。
統計検定については、2級と3級がCBT方式で受験可能ですので、興味がある人は挑戦してみてはいかがでしょうか。
あと、統計分野ということで、類似の資格に、ビジネス数学検定というものがあります。
私は1級に合格できましたので、その体験談を紹介します。
興味のある人はぜひ挑戦してみてください。