倒産と廃業のちがい…倒産よりも怖いのは実は…?
倒産と廃業。
どちらも、似たような言葉ですよね。
ほぼ同じ、ネガティブな意味として捉えている人が多いのではないでしょうか。
しかし、実は、この2つの言葉は、全く別物なのです。
まずは、この違いを明確にした上で、今回のコロナ危機において、どちらが怖いのか、私の私見を述べてみたいと思います。
倒産と廃業のちがい
まず、倒産について説明します。
倒産とは、会社の資金が底をつき、取引先や従業員への支払いができなくなり、会社自体が存続できなくなることを指しています。
この場合、周囲の人たちに迷惑をかけることになるので、法的に、資産や負債を整理して、支払うべきものはきちんと支払うように整理していきます。
一般的に、法的な整理には「精算型」と「再建型」と呼ばれるものがあります。
精算型は、文字通り、資産や負債を整理・精算をして会社を閉じてしまうことを言います。
再建型には、経営陣がそのままがんばる「民事再生」と、経営陣が交代する「会社更生」の2種類があります。
再建型の2つは、どちらも、会社がなんとか続くようにがんばる手続きであることが特徴です。
法的な整理を無視した場合、銀行などから、強制的に取引を停止させられることもあります。(この場合、”事実上の倒産”と言います。)
次に、廃業について説明します。
廃業とは、経営者自らが、計画的に会社をたたむことを指しています。
こちらは、単純に、赤字が続くといった経営上の問題だけはないことが特徴です。
廃業には、高齢になって、体力的にしんどいとか、後継者がいないとか、さまざまな理由が考えられます。
コロナショックによって増えるのは…
昨今のコロナ危機。
2月3月では顕在化してこなかった倒産件数ですが、4月になって少しずつ顕在化してきました。
緊急事態宣言に基づく外出自粛の動きを受けた宿泊業や飲食業が大きなダメージを受けているのです。
飛行機や新幹線などの交通業界も、移動が自粛されている以上、引き続き、厳しい状況は続くでしょう。
需要がすぐに元どおりになる保証はないため、今後も、体力のない中小企業の倒産は増えるものと推測されます。
しかし、私は、倒産以上に、廃業のことが気になっています。
テレビや新聞で発表されている、企業の倒産件数に、廃業件数は含まれていません。
日本の中小企業は、コロナ前から「後継者不足問題」に悩まされ続けてきました。
私は、このコロナショックを機に、早めに仕事を卒業する早期リタイアが加速するのではないかということを危惧しています。
ようは、黒字のまま、廃業してしまうケースが増えると推測しているのです。
需要が増えない状況がこのまま続くとしましょう。
そうすると、固定費を支払い、商売を続けるよりも、内部留保のあるうちに、お店をたたみ、引き際美しく、老後を過ごす人が増えてくるのではないかということです。
そうなると、働き手の不足(しかも経営がうまくいっている黒字起業の廃業)、高齢化に伴う年金負担などの問題がさらに加速することになります。
今後の対策
経済的な直近の対策としては、
「経営難に陥っている倒産しそうな会社を救うこと」
であることは間違いありません。
しかし、中長期的には、
「廃業の増加に伴う、黒字企業のリタイア、働き手の不足などの問題」
に対して、早めに手を打つことも重要だと思っています。
このためには、事業承継やM&Aといったサポートを加速させるような政策が必要となってくるでしょう。
日本の企業の99%は中小企業です。
約7割の人が中小企業で汗を流しているのです。
コロナ対策が後手後手に回っている日本政府ですが、廃業問題は、何もコロナ危機に始まった話ではありません。
コロナ危機以前から、既に存在していた問題です。
現役世代の活性化を促すためにも、有効な先手を打ってもらいたいものですが…。