休職から復職へのステップ…傷病手当金の受給に潜む落とし穴とは?
会社に勤めていて、ケガや病気になって働けなくなった場合、頼りになる制度が傷病手当金になります。
傷病手当金をもらうまでの要件については、書籍やWEBなど、あちこちで見つけることができます。
しかし、傷病手当金をもらい終えて、実際に復職するまでの道筋に関しては、触れている記事は非常に少ないです。
特に、生活費は死活問題となります。
実際、経験した私も、このお金の件に関しては、情報が不足していて、とても苦労しました。
今回は、この点に焦点を絞って、お伝えしていきたいと思います。
傷病手当金とは
傷病手当金とは、会社員がケガや病気になり働けなくなった場合、療養中の生活費を保障するために、健康保険組合から支給される手当のことです。
傷病手当金の制度では、ざっくり言えば、給料(正確には標準報酬月額)の約3分の2の金額が、最長1年6ヶ月の間、支給されることになります。
これは、国民健康保険に加入している自営業の人にはない、会社員のための制度となっています。
自営業よりも会社員のほうが社会的に恵まれていると言われている、ひとつの根拠にもなっています。
もちろん、傷病手当金は非課税ですので、受給中は、傷病手当金に係る税金を支払う必要はありません。
ケガや病気で働けなくなった人にとっては、非常に頼もしい制度になっています。
このため、傷病手当金の制度のことを、悪く言う人は非常に少ないです。
傷病手当金の盲点
傷病手当金は、文字通り、傷病して働けない人のための手当金です。
働ける状態になれば、支給がストップすることになります。
この解釈が、私の中では、非常にグレーなのです。
例えば、毎日、働けずに休んでいて、傷病手当金をもらって生活をしていたとします。
5月末まで、そのような療養生活を送っていて、6月の最初の週からフルタイムで残業もしながら、傷病手当金受給前と同じような仕事がすぐにできるでしょうか?
私は、どんなケガや病気でも、リハビリ期間というのが必要だと思っています。
会社の近くまで通勤してみたり、週に1度だけ勤務してみたり、午前中だけ出社してみたり…。
リハビリの仕方はケースバイケースだと思います。
しかし、徐々に体を慣らしながら、少しずつ復職を目指していくというのが自然なやり方ではないかと思っています。
仮に、リハビリ期間が2ヶ月間、必要だったと仮定します。
すると、5月末まで療養していた場合、6月7月はリハビリ期間、8月から復職(フルタイム稼働)となります。
復職までの道筋という意味では自然ですが、傷病手当金の制度は、これに追随していません。
6月7月の間は、傷病手当金が完全にストップしてしまうのです。
健康保険組合によって、解釈が多少異なることもありますが、週に1日でも勤務すると、労務可能とみなされて、傷病手当金はストップしてしまうことが多いのです。
医師が療養中のリハビリである点を認めていたとしても、労務している時点で、傷病手当金はストップしてしまう可能性が高いのです。
私は、いくつかの健康保険組合に問い合わせてみましたが、週に3時間でも勤務やアルバイトをすれば、傷病手当金の支給はストップすると言われました。
報酬をいただかないリハビリケースについては、総合的に判断して決めるという回答をした組合もいました。
仮に、5月の傷病手当金が30万だったとした場合、傷病手当金は、6月に20万、7月に10万、8月から無支給など、実態に合わせて、段階的に減らしていく制度ではないのです。
6月7月は、傷病手当金を当てにしたリハビリ活動は期待できないため、何か他の手を考える必要があるのです。
復職を目指して…
では、傷病手当金の盲点(弱点?)である、リハビリ期間ですが、一体どのように生活費を担保していけばいいのでしょうか?
この場合、次の2つの方法があります。
①障害年金
障害年金制度の細かな説明は、ここでは割愛しますが、審査をパスすることができれば、療養後、1年6ヶ月してからもらうことのできる年金になります。
障害の重さに準じて、1級から3級まで認定級があり、支給額はそれぞれ異なってきます。
障害年金のもらえない1年6ヶ月間の期間を補完しているものが傷病手当金だと考えれば、腹に落ちるかと思います。
傷病手当金は、1年6ヶ月で打ち切られますし、上記のような、リハビリ期間でも打ち切られることがあります。
しかし、この障害年金は、週に1日勤務していても、アルバイトをしていても、労務に制約が残る限りは、受給し続けることが可能になります。
審査にも時間がかかるため、傷病手当金受給の終わりが見えてくると、この障害年金への切り替えを考えることが重要になってきます。
ちなみに、障害年金と傷病手当金が重なる期間があった場合は、併給調整されます。
つまり、傷病手当金のほうが多い場合は、障害年金が支給され、差額が傷病手当金として支給されます。
障害年金のほうが多い場合は、傷病手当金を全額返金する必要があります。
②失業手当
会社員として休職していて、傷病手当金をもらっているケースについては、会社の人事部と相談して復帰すればよいでしょう。
しかし、無職の状態で傷病手当金をもらっているケースは注意が必要です。
無職で傷病手当金をもらっているケースでは、失業手当をもらう期間を延長する手続きをしていると思われます。
この手続きは、
”ケガや病気が治った後、失業手当をもらいながら、就職活動してくださいね”
というものです。
傷病手当金と失業手当は同時に受給できないのです。
5月まで療養していた場合、6月7月は失業手当をもらいながらリハビリをして、8月からの完全復帰に備えるという方法が考えられます。
この場合、傷病手当金は5月末でストップします。
しかし、障害年金への切り替えが済んでいるのであれば、6月7月は障害年金と失業手当の両方を受給することが可能になります。
なお、傷病手当金の受給については、グレーな解釈が多々あります。
あまり公にできない話もあります。
私も、うつ病経験者ですので、いちおう一通り経験してきました。
このため、不明な点があれば、個別に問い合わせていただければ、可能な限りアドバイスは可能かと思います。
この分野は、知っているか知らないかで、得も損もします。
誰でも経験する可能性はあるので、一通りの流れを理解しておくことをおススメします。