セミリタイアと家族・子供・住宅ローンは共存できるのか?
暑いですね。
猛暑に台風に新型コロナに…例年以上に厳しい夏です。
さて、今回は、少しだけ奥の深いテーマを扱いたいと思います。
最近、若い人たちの間で、FIREやセミリタイアといった、組織に縛られない自由な生き方の人気が高まっています。
若い会社員のうちに、節約により莫大な資産を構築。
それを元手に投資にまわし、会社員を退職。
配当や運用益で生活費を賄い、若くて元気なうちに、好きなことをして生きていく…
ある意味、理想的な生き方です。
多様な生き方は尊重されるべきであり、考え方としては、私も賛成です。
ただ、現実問題として、
・結婚して子供を産みたい
・マイホームを購入したい
・両親の介護が必要となった
・年金がいくらもらえるか分からない
・将来が不安である
など、長い人生、選択肢によっては、莫大なお金がかかることも否定できません。
時代のニーズも変化が激しいです。
今ある会社が続くとは限らないですし、今あるスキルが未来永劫使える保証もありません。
そこで、これらの選択をした場合、セミリタイアをどのように捉えていけばいいのか、考えていきたいと思います。
ちなみに、私は、家族・子供3人・住宅ローン持ちで45歳でセミリタイアとなりました。
子供を産んでも、セミリタイア可能な社会なのか?
この記事を書こうと思ったのは、いつも拝読させてもらっているサブロウさんのブログ「仕事を辞めたい」の7月23日の記事を目にしたときでした。
要約すると、
”子供を育てながら、セミリタイアできる社会であってほしい”
という問題提起になります。
私も以前、似たような視点から、次のような記事を書いて、多くのコメントをいただきました。
上記の記事で書いた、私からの5つの提言
①逃げ場を確保する
②自分で稼ぐ力をつける(意識する)
③相談できる人脈・パイプを作っておく
④本業を活用する
⑤健康管理を徹底する
に関しては、概ね肯定的な意見が多かった気がします。
今回は、上記メッセージとは別の視点で
「重たいものを背負ってのセミリタイア」
について見ていきたいと思います。
自助・共助・公助とは?
突然ですが、防災対策では、次の3要素が重要だと言われています。
①自助
②共助
③公助
順番に見ていきましょう。
①自助
”自分(家族)の命は自分(家族)で守る”
ことを指しています。
防災対策の基本中の基本の考え方になります。
②共助
”自分たち(地域・組織・コミュニティ)の命は自分たち(地域・組織・コミュニティ)で守る”
ことを指しています。
自分が助かったら、次に、困っている人を助けてあげる気持ちを持ち、普段から備えておくことが重要だという考え方です。
③公助
”行政機関(傷病・警察・自衛隊)の支援を受ける”
ことを指しています。
ライフラインの復旧や災害救助活動、避難所の立ち上げなど、行政機関に頼るという考え方です。
上記3要素の生き方への活用
上記の3要素は、防災だけでなく、セミリタイアを含めた生き方・働き方にも当てはめることも可能です。
①自助とは、自分の力で稼いで生活していくことを指しています。
②共助とは、周囲の力で助け合いながら生活していくことを指しています。
③公助とは、国・自治体の補助を受けて生活していくことを指しています。
セミリタイアした場合のリスク
家族・子供だけでなく、マイホームを持ちたい方も多いと思います。
そこで、冒頭の問題提起を次のように書き換えます。
”家族・子供・住宅ローンなどとセミリタイアは共存できるのか”
これを、
①自助
②共助
③公助
の3要素に当てはめて考えていきたいと思います。
まず、③公助です。
ご存知の通り、老後の年金が賦課方式(自分で自分を支えているのではなく、若者が高齢者を支えている)を採用している以上、将来不安を払拭することは厳しいと思われます。
世代間の不公平が発生するため、社会保険制度を大きく変えることもできません。
セミリタイアするということは、さまざまな収益源を構築すれども、大きな組織に属さないことが基本となります。
大きな組織に属さないということは、国のセーフティネットから大きく外れることにもなります。(個人事業主はお金のセーフティネットが会社員に比べて弱いので。)
少子高齢化である実態(この原因のひとつが将来不安)、国や自治体の財源にも限界があることを踏まえると、公助へ大きな期待をすることは厳しそうです。
次に、②共助です。
共助とは、知人や周囲の人とのコミュニティでなんとかするという考え方です。
しかし、セミリタイアしたい人は、社会との関わりを極力少なくしたい人が多いと思われます。
小規模グループを形成すると、そこでの人間関係で、ストレスが生まれますので、ここでも大きな期待はできません。
家族や親族を共助の対象として捉えても、核家族化が進んでいるため、過度に期待することはできないでしょう。
実家暮らしで支出を抑えるという考え方はありますが…。
防災面での共助は期待できますが、お金面での共助は期待薄といえるでしょう。
結局のところ、①自助に依存してくることになります。
若い人たちに対しては、大きな会社も声をかけてくれるでしょう。
一方、大きな会社からすると、離職率が高いこともあり、長期的な視点での育成をすることが難しい状況になっています。
逆に、若い人たちからすると、一生会社に尽くすことを考える人も少なく、若さがあるうちは自由でいいですが、年齢を重ねてくると、大きな会社への門戸が少しずつ狭くなっていきます。
そうなると、若いうちから「稼ぐ力」をつけておく必要がでてきます。
住宅ローン・家族・子供には、長期的にお金がかかっていくことも事実です。
・35年もの長期間、安定して収入を得ることができるか
・子供が成人するまで育てる経済力を維持できるか
この不確実性を担保できる人であれば、セミリタイアも可能となるでしょう。
しかし、35年先まで継続して成功する投資やビジネスを独力で開拓していくことはかなり難易度は高いものと思われます。
現在、副業やYoutuberで儲かっている人が35年後も継続収入があるとは限りませんよね。
そこで、長期間、安定した収入を得るための簡単な方法が、大きな会社に入って働き続けることになります。
結局は普通のサラリーマン(労働収入)です。
面白くなくても、人間関係がわずらわしくても、雇われて働き続ける必要があります。
35年という長い時間、家族・子供を支える経済力を維持し続けることができれば、セミリタイアも可能です。
しかし、長期的視点で稼ぐ力を担保できないのであれば、サラリーマンという選択肢に頼らざるをえないのが実態でしょう。
ただ、サラリーマンでも、スキルの変化の波は襲ってきますし、倒産やリストラのリスクもあります。
そこで、セミリタイアを目指す多くの人たちはミニマリストであり続けようとします。(本来、セミリタイアはゴールではないのですが。)
35年ローンの住居や子供をつくらず、節約一筋で生きる早期リタイアが流行っているようです。
実際、節約して貯蓄に回した資金を投資にまわし、運用益で完全リタイアしている人も結構います。
多様的な生き方は尊重されるべきで、身軽・自由な生き方は魅力的でもあります。
ただ、リスクも併せ持っています。
・一人で老後を過ごす不安(介護・孤独死)
・金融投資や不動産投資における市況の変化(資産運用リスク)
・周囲の人間構成の変化(結婚・子供・大切な人の死)
・賃貸でずっと固定費を払い続ける長生きリスク
・AIなどのテクノロジーによるビジネス環境の変化
・未知の外的要因による変化(新型コロナ・震災など)
若者には多くの時間が残されています。
この多くの時間は、多くの可能性を秘めていると同時に、大きな不確実性(リスク)も併せ持っています。
若者の方々にはこのあたりの可能性・リスクを理解して、セミリタイアに踏み切っていただきたいと思います。
まとめ
前述の問題提起に対する私の考え方をまとめます。
「家族・子供・住宅ローンとセミリタイアは共存できるのか?」
「時間という要素が、可能性と不確実性(リスク)を併せ持っているので、それらをカバーすることのできる経済力があればセミリタイアは可能」
もっと簡単に言えば、
「(本業・副業に限らず)長期的に稼ぎ続けることのできる仕組みを持っていればセミリタイアは可能」
結論だけ言えば、当たり前なことにも聞こえます。
ただ、時代・年齢によって必要とされるスキル・ニーズは目まぐるしく変化しています。
長期的に稼ぎ続けるというのは、意外と難しいという認識です。
柔軟に対応していく必要があります。
言葉でいうのは簡単ですが、いざ決断するとなると勇気がいると思います。
セミリタイアを考える場合、十分すぎるほどリスクを踏まえた上で、最適な判断・後悔のない判断をしていただきたいと願っています。