賃貸物件を法人契約することで、社宅の家賃を経費化する方法!
私はフリーランスのコンサルタントです。
今までは、個人事業主として活動していましたが、今年(2018年)、合同会社という法人を立ち上げました。
個人として働くのと、法人として働くのとでは、仕事の内容は変わりませんが、お金の動きは全く異なっています。
そのちがいのひとつとして、
「社宅の活用」
というテーマがあります。
これは、個人事業主では認められなかった制度です。
しかし、法人を立ち上げた場合、この「社宅」を活用することで大幅な節税をすることが可能になるのです。
今回は、社宅を活用した節税の仕組みについて、私の体験談を交えて、紹介していきたいと思います。
私のプライベートな住居費用
社宅の活用の話をする前に、まず、私のプライベートを紹介させてください。
現在、私は、妻と子供と一緒に、マイホームで暮らしています。
そして、私には、年金暮らしの両親もいますが、両親は、実家と呼ばれる持ち家やマンションを保有していませんでした。
このため、私がセカンドハウスとして賃貸マンションを契約して、毎月、家賃10万円を支払ってきました。
両親はそのセカンドハウスで暮らしています。(会社に近いので、私もたまに使っていますが。)
セカンドハウスというと聞こえはいいと思います。
しかし、私から見れば、マイホームの住宅ローンと、セカンドハウスの家賃との二重払いになっていたのです。
なんとなく、私の生活が苦しいのは想像できるのではないでしょうか。
個人契約から法人契約への変更
冒頭でも書きましたが、私は法人を設立しました。
法人は、設立するのに、かなりのパワーが必要です。
しかし、一度設立してしまえば、経費にできる支出の範囲がとても広いのが魅力です。
そこで、マイホームの住宅ローンはともかく、セカンドハウスの家賃をなんとかできないのか、私は考えました。
すると、社宅を活用する方法があることを知りましたので、早速行動に移してみました。
まず、私個人で契約しているセカンドハウスの管理会社に、私の法人との直接契約にできないのか交渉することから始めました。
私が家賃を払うのではなく、私の会社が家賃を負担するようにしたかったのです。
個人から法人への契約変更は、一度個人契約を解約し、法人と新規契約する必要がありました。
しかも、出来立ての何の実績もない法人なので、契約の審査が通るかどうかも分かりません。
ただ、私の場合、
・私個人が長年、セカンドハウスを契約して問題も滞納もなかったこと
・私個人には継続した収入があったこと
から、
・契約者:私の法人
・保証人:私
という形態で、運よく、新しく法人契約を結ぶことに成功しました。
経費に算入できる金額とは?
個人から法人に契約を変更することにより、今後は、私の会社が月額家賃10万円を負担してくれることになりました。
私のセカンドハウスは、私の会社の社宅に変身したのです。
しかし、実質ひとり法人ですので、私が支払うのも、私の会社が支払うのも、私の財布からお金が減ることに変わりはありません。
私の会社の視点で考えると、毎月、家賃を10万円支出することになります。
この場合、毎月10万円を経費としてもいいのでしょうか?
いや、そう簡単な話ではないのです。
私の会社が家賃10万円を支払うのはいいですが、社宅なので、誰かに貸しているはずですよね。
今回のケースでは、入居者・使用者である私の両親(私の会社の非常勤役員)が該当します。
この場合、私の両親が、私の会社に対して、家賃を支払わなければなりません。
仮に、9万円を家賃として、私の会社に支払えば、私の会社の純支出は10-9=1万円になります。
家賃を1万円とすると、同様に、私の会社の純支出は10-1=9万円になります。
では、私の両親や私は、一体、いくらの家賃を私の会社(社宅)に支払えばよいのでしょうか?
税理士に聞いたところ、一般的なのは、オーナーへの家賃の5割を超えていればいいそうです。
5割を家賃として支払っていると、税務署から、何も文句を言われないとのこと。
つまり、私の両親から私の会社に家賃を5万円支払うことにするのです。
そうすると、10-5=5万円が、私の会社の純支出となり、この金額が、経費として扱われることになります。
これで、年間60万円を経費とすることができるようになりました。
なかなか大きな節税効果です。
もう少し経費を増やす裏ワザ
先ほど、税理士の話では、社宅に支払う家賃は、
「実際の家賃の5割を超えていればいい」
と言われました。
しかし、よく調べてみると、実際の家賃の5割ではなく、その物件の賃貸料相当額でもいいことが分かりました。
正確には、私の社宅のような小規模住宅の場合、賃貸料相当額は、次の計算式に当てはめて計算することができることが分かりました。
国税庁HPより
次の①から③の合計額が、賃貸料相当額になります。
①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)*0.2%
②12円*(その建物の総床面積平方メートル)÷(3.3平方メートル)
③(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)*0.22%
なんか、ややこしそうな式ですね。
計算するのが面倒なので、ほとんどの人は、社宅家賃の5割に設定しているのだと分かりました。
しかし、私の社宅は新築物件でもなければ、築浅物件でもありません。
私は不動産投資家でもあったので、ピンときました。
ひょっとしたら、私の社宅の固定資産税は安いのではないか。
そう考えた私は、多少、面倒でも上記の式で、賃貸料相当額というものを計算してみることにしました。
ん?
私は物件を社宅として借りているだけ、つまり借主なので、固定資産税の額など分かるはずがありません。
実際に、固定資産税を支払っているのは、賃貸物件(社宅)の本当のオーナーです。
そこで、私は管理会社を通じて、オーナーに相談してみました。
すると、案の定、固定資産税課税標準額を開示することについて、オーナーから、難色を示されました。
オーナーとしては、よく分からない会社に、固定資産税の金額を知られたくなかったのでしょう。
このままオーナーと交渉を続けても難しいことが分かりましたので、オーナー経由で調べることは諦めました。
そこで、社宅のある地域を管理している市税事務所に行きました。
市税事務所では、その地域の固定資産税を管理しています。
ただ、誰でも、固定資産税を調べることができるわけではありません。
しかし、賃借人であれば、次の3点
・私個人の身分証明書
・私の法人の代表者印
・社宅物件の賃貸契約書
を用意することで、固定資産税評価証明書(地域によっては、公課証明書と呼ぶ場合もあり)というものを発行してくれました。
そこには、
・固定資産税課税標準額(土地)
・固定資産税課税標準額(建物)
がきちんと示されていました。
さきほどの複雑な計算式に当てはめると、私の社宅の賃貸料相当額は約2万円だということが分かりました。
私の両親や私が、社宅に対して、月額2万円を支払っていれば、社宅として経費算入できることを、国税庁が証明してくれたのです。
つまり、私の会社は、月額家賃10万円をオーナーに支払い、2万円の家賃を個人から得ることになります。
このため、月額8万円を経費とすることができるのです。
年額に換算すると、96万円が損金となるのです。
先ほどの家賃ベースだと、60万円しか、損金算入できなかったところ、少し手間をかけて計算してみたら、96万円を損金算入することができるようになったのです。
私は上記の流れを社宅規程としてまとめ、実際、税理士に相談しました。
すると、年間96万円を経費としてもOKということになりました。
まとめ
私が個人で支払っていたセカンドハウスの月額10万円の家賃。
このお金は、外にでていくだけのものでした。
しかし、そのセカンドハウスを社宅化することで、全く異なる仕組みに変化を遂げました。
月額10万円が私のもとから消えていくことに変わりはありませんが、そのうち8万円を経費とみなすことができるようになったのです。
これは、かなり大きな節税効果です。
社宅の規模によっては、小規模企業共済や経営セーフティ共済を使った節税方法よりも効果があるかもしれません。
法人って便利ですね。
多少面倒なことであったとしても、お金の話をきちんと理解することで、大幅な節税をすることができるということが分かりました。
やはり、お金の話は知ることがすべてなんだと、改めて認識しました。