マイクロ法人の経営者・個人事業主が、予期せぬ事態に備えるべき3つの視点とは?
2020年、師走。
言うまでもなく、今年はコロナ禍で大変な年でした。
大方の予想通り、未知のウイルスということで、事態は長期化しています。
新型コロナウイルスは、感染拡大もさることながら、社会経済にも大きなダメージを与えています。
体力のない中小・零細企業・個人事業主など、倒産・失業者も増えてきています。
そんな中、私の経営しているマイクロ法人(ひとり法人)は、おかげさまで無事3期目の決算を迎えようとしています。
歴史の浅いひとり法人ではありますが、倒産することはありませんでした。
そして、このままコロナ禍が長期化しても、おそらく生き延びることはできると思っています。
それは、自分なりの「有事の経営ノウハウ」を強く意識・実践しているためです。
業種・業態はさまざまなものがありますので、経営に模範解答はありません。
しかし、どんな状況でも、リスクを低減するための経営ノウハウはあるのではないかと考えています。
今回は、私の考える3つのポイントを紹介したいと思います。
経営者が持つべき3つの視点とは?
私の考える、リスク低減のための重要な視点とは、次の3つです。
①将来の見通しを立てること(予測)
②変化への柔軟な対応ができること(柔軟性)
③キャッシュフローを強く意識すること(流動性)
私は業務改革コンサルタントで、大企業・中小企業など、多くの会社を見てきました。
上記3つは、言葉だけ見れば、どれも当たり前のように聞こえますよね。
しかし、ほとんどの会社において、上記3つはできてないことが多かったような気がします。
言葉では簡単ですが、実践は非常に難しいのです。
では、コロナ禍に照らし合わせて、順番に見ていくことにしましょう。
視点①:将来の見通しを立てること(予測)
業務改革のひとつのツールとして、SCM(サプライチェーンマネジメント)という考え方があります。
販売・調達・物流・生産…
などの業務プロセスを経営と紐付け、企業活動を最適化する活動のことを指しています。
90年代後半頃から、各企業が取り組み始めたマネジメント手法となります。
このSCMを取り入れることにより、
「在庫が余ることなく、必要な場所に必要なタイミングで必要な量の商品を届ける」
ことができるようになるのです。
この活動の出発点こそが、まさに「需要予測」なのです。
”この商品が将来どのくらい売れるのか”
この見通しをつけることが、最も重要なのです。
こう書くと、10人中9人の担当者は、
”そんなの当たるわけがない”
”意味がない”
と口を揃えて言います。
私も予測が100%当たるとは思っていません。
ただ、この予測を基準として、アクセルを踏んだりブレーキを踏んだりすることが重要なのです。
羅針盤をもって航海するか、行き当たりばったりで航海するかの差です。
特に、コロナ禍のような未知の疫病については、徹底したリスク管理が重要です。
ビッグデータを用いて、客観的に見通しをつけ、最悪のケースではこうなるので、このような施策を打って…
と、基準ベースの思考プロセスで検討・意思決定を進めていくのです。
私の場合、2020年1月の時点で、コロナ禍の長期化を予想していました。
https://kazukibi.com/blog-entry-223.html
この頃は、まだ、中国で何か変な疫病が流行ってます…
くらいの軽い報道でした。
ただ、日本に入ってきたら大変なことになるだろうなぁと、私は感じていました。
最悪の事態を想定したわけです。
そこで、コンサルティングの契約を一時的に長期的なものとし、テレワークができる体制をいち早く整えました。
これにより、緊急事態宣言時も仕事はなくならず、テレワークでうまく進めることができました。
そして、持続化給付金、家賃支援給付金にも、いち早く目をつけ、受給するための準備を整えました。
長期化することが分かっていましたので、できる限りの融資を好条件で引き出す活動も行いました。
その結果、日本政策金融公庫と地方銀行の双方から、コロナ特別融資を引き出すことができました。
これだけで、何も仕事がなくても、1年程度は生き延びることができる算段がついたわけです。
「予測・見通し」がいかに重要かが分かるかと思います。
視点②:変化への柔軟な対応ができること(柔軟性)
少し視点を変えてみましょう。
もし、視点①で完璧な予測ができたとします。
具体的に言えば、今から3年前(2018年頃)の時点で
「2020年に未知の疫病がやってくる」
ことが分かっていたとしていたら、一体どのような社会になっていたのでしょう。
まずは、医学的な観点から。
未知の疫病が2年後に発生することは分かっていたとしても、それが新型コロナウイルスであるかどうかは分かりません。
このため、ワクチンや特効薬などの開発を事前に進めることはできません。
よって、現在と同様、石橋を叩きながら渡る状態になることが想像できます。
ワクチン・特効薬という点においては、変化に対して迅速に対応することは厳しいのではないかと予想できます。
ただ、病院・病床や人員などのリソースについては、事前に増員することは可能です。
ECMOなどの専門性の高い技術者を育成するための時間稼ぎも可能であり、現在より、少しはマシな状態になっていたのではないかと思われます。
次に、お店などの経営的な観点ではどうでしょう。
まず、2年後に疫病パニックが発生することが分かっているのであれば、どの会社も内部留保(貯蓄)を増やすでしょう。
自宅に閉じこもっていても大丈夫なように、耐えられるだけのお金をなんとしても調達するように動くでしょう。
あとは、ビジネス形態です。
老舗の旅館・飲食店などは、ビジネスモデルを変えることができるでしょうか?
家賃の安いところに引っ越すか、通信販売に切り替えるか、不動産など多角化経営に乗り出すか…。
私の経験上、おそらく、ほとんどの会社は、変化を嫌います。
個人のスキル・経験のみに頼るビジネスも多々あると思います。
ラーメン屋さんに、Youtubeをしましょうとか、不動産投資しましょうとか、言っても響かないでしょう。
せいぜい、テイクアウトメニューの比率を増やすことくらいでしょうか。
部品工場などの中小・零細企業については、疫病と関係のあるものにシフトできればいいです。
しかし、そうでない工場は、変化に柔軟に対応することは厳しいでしょうね…。
ちなみに、私の場合、客先に常駐するコンサルティングスタイルから、オンラインで対応可能なスポット型コンサルティングに切り替えました。
不動産投資、金融投資、ブログ広告収入など、不労所得の比率を増やしました。
小さい会社だからこそ、小回りの良さを強く意識していました。
このため、変化に柔軟に対応できたのです。
この点においては、やはりビジネスは1本では厳しいのではないかと感じています。
ラーメン屋さんが株式投資をしたり、旅館がYoutubeに手を出したり、何らかのリスクヘッジは必要になってくるのではないでしょうか。
ようは、
”複数の収益減を持っておこう”
ということです。
個人レベルでも同様です。
会社をクビになったときに、路頭に迷うのではなく、事前に副業を確立しておくことは必須ではないかと確信しました。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
視点③:キャッシュフローを強く意識すること(流動性)
言うまでもなく、キャッシュフローは重要です。
資金繰りの調整は、経営者として最重要のタスクです。
”無借金経営”
きれいな言葉ですよね。
しかし、よほどのお金持ち・資産家でない限り、無借金経営は難しいです。
法人として活動していくためには、設備や研究など、投資資金が必要となってきます。
このため、なるべくいい条件で、融資(借入)を引き出すことが重要なのです。
もちろん、借入金というのは、決算書としての見栄えはよくありません。
しかし、コロナ禍において、目先のお金がなくなってしまえば、その時点でジ・エンドです。
個人事業主の場合、会社員に比べて、社会的信用が著しく低いため、融資できる機会はなかなかないです。
小さな法人の場合、創業融資はありますが、一度、創業してしまえば、その後、融資を引き出すことは簡単ではありません。
このため、コロナ禍のように、緊急事態時においては、
”借りれるものは遠慮なく借りる”
というスタンスをとることが重要ではないかと考えています。
私はコンサルティング業ですので、仕入も家賃も不要です。
ただ、創業時には融資を引きました。
借金は「悪」ばかりではなく、「良い借金」もあるのです。
コロナ禍は特別なケース(大災害)です。
借りれるときに、どんどん借りておき、目先のキャッシュ枯渇を防ぐことが重要です。
今後の見通し
もう一度だけ、書きます。
私の考える、予期せぬ事態に対するリスク低減、重要な経営視点は下記の3つです。
①将来の見通しを立てること(予測)
②変化への柔軟な対応ができること(柔軟性)
③キャッシュフローを強く意識すること(流動性)
これを常に意識することができればいいでしょう。
ただ、
”現在の仕事に追われていて、そんな暇はない!”
というのが現実だと思います。
コロナ禍は長期化するでしょうし、また別の疫病がやってくるかもしれません。
①予測については、新聞・ニュースの情報を得るだけでなく、考えるクセをつけるところから始めるといいと思います。
「自分だったらこうするのになぁ…」
と考える程度で構いません。
その際、今日明日の予想ではなく、中長期的な視点をもつことが重要です。
②柔軟性について、結論はひとつです。
それは、今の収益(本業)以外に、収益源を持ちませんかということです。
で、その収益源は、本業がダメになったときに、代替可能となるものがいいと思います。
本業が対面での販売・製造・サービス業であれば、金融投資、不動産投資、オンライン系のビジネスあたりが代替ビジネスに該当するのではないでしょうか。
私の読みでは、おそらく来年は、業態変化・新規チャレンジする企業に支援がなされると予想しています。
③流動性については、とにかくアンテナを張ることです。
お金の話は知っていることがすべてです。
政府・自治体の給付金・融資などの状況は刻々と変化しています。
gotoシリーズも日々変化(右往左往?)しています。
それらを、予算がなくなる前に、早めにチェックする。
このような地道な努力が、先読みを可能にするのではないかと思われます。
この先も、いばらの道が待ち構えていると思います。
マイクロ法人の経営者・個人事業主の方々は、辛い時期が続きますが、一緒にがんばっていきましょう!